レビュー

 【ヘイト・ユー・ギブ】映画の感想|その憎しみは未来の誰かを傷つける。人種差別を真正面から描いた作品


ヘイト・ユー・ギブ
総合評価

「ヘイト・ユー・ギブ」のあらすじ、感想です。

たまたま、ヒット作や話題作を観ることが続いた時に、気分を変えてあまり有名ではない映画が観たくなりました。

この「ヘイト・ユー・ギブ」は、どこかで見聞きして、タイトルだけ知っていた作品です。
簡単にあらすじを確認し、ほとんどフィーリングだけで観ることに決めました。

若い女の子がボードを持つポスターから、明るく元気な映画を想像。しかし実際に鑑賞してみて、軽い気持ちで観始めたことを、反省することになりました。

  1. 今も続く人種差別の現実
  2. 憎しみが未来にもたらすもの

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ヘイト・ユー・ギブ 基本情報

原題 The Hate U Give
原作 小説 「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ」アンジー・トーマス
製作国 アメリカ合衆国
監督 ジョージ・ティルマン・ジュニア
出演者 アマンドラ・ステンバーグ、レジーナ・ホール、ラッセル・ホーンズビー
公開時期 日本未公開(アメリカ・2018年公開)
ジャンル 人間ドラマ

ヘイト・ユー・ギブ あらすじ

貧しい黒人居住地区で生まれ育ちながら、白人の多い私立高校へ通うスターは、地元と学校では別の人間になったような生活を送っていた。

ある日地元で、幼なじみで初恋の相手であるカリルが運転する車に乗っていたスターは、目の前でカリルが白人の警察官に撃たれ、命を落とすところを目撃してしまう。

カリルを撃った警官の行動を正当化しようとする警察に対し、黒人の住人たちは激しく抗議。

スターも、目撃者としてメディアや裁判で証言することを求められるが、白人の友人やボーイフレンドに、地元での自分を知られることを恐れ、躊躇する。

ヘイト・ユー・ギブ ツイッターの反応

ヘイト・ユー・ギブ 個人的な感想 ⚠︎ネタバレ有り

詳しく知らなかったとはいえ、なぜ明るい映画だなんて思ったのだろう?

観る前の自分の呑気さを、反省しました。

「ヘイト・ユー・ギブ」で描かれる内容は、決して軽い気持ちでは観られないし、実際「観続けるのが辛い」と感じる瞬間もありました。

それでも、この映画に出会えたこと、知らなかった真実を知ることができたことに、今は感謝しています。

まず衝撃的だったのは、すべての発端となった銃撃事件です。

主人公・スターは、幼なじみのカリルが運転する車で家に帰る途中、一台のパトカーに停止を求められます。

二人は幼なじみの若い男女。武器もドラッグも持っていない。抵抗もしていない。

カリルたちに一切非がないことは、われわれ観客の目にも明らかでした。それでも、白人の警察官はカリルを撃ち、彼は命を落とします。

あらすじを読んで、何が起きるかわかっていたはずなのに、実際にこのシーンを見ると、想像以上に胸が痛みました。

今までは、遠い国の出来事だと思っていた「無抵抗の黒人の青年が、白人の警官に撃たれて死亡」というニュース。

しかし、この映画を観ることで、ニュースで言う”黒人の青年”の身に起きたことが、いかに理不尽でやりきれないものなのかが、かつてないほどリアルに理解できたように思います。

カリルの事件をきっかけに、スターは黒人としてのアイデンティティ、社会に存在する差別や人種間対立に、正面から向き合うようになっていきます。

そんな中、観ていて一番辛かったのは、過去から受け継がれた人種間の対立や憎しみが、現在の社会や人間関係を分断していくことでした。

事件後、スターは仲の良かった白人の女友達と絶交し、ボーイフレンドとも、一時関係が破綻しかけます。

黒人コミュニティの中でも、スターが裁判で証言することを快く思わないギャングに襲撃されるなど対立が生じ、スターの幼い弟までもが、憎しみの連鎖へと巻き込まれていきます。

過去から続く対立と憎しみの歴史が、まだ何にも染まっていない若者や子供たちの心を蝕み、人間関係を引き裂く様には、胸が締めつけられました。

あらゆるヘイトは、現在の社会を分断するだけでなく、その記憶が未来に渡って、新たな憎しみを生み出す。

この映画で描かれた内容はアメリカだけの問題ではなく、すべての人間が忘れてはならない真実だと思います。

鑑賞後に知って驚いたのですが、本作は日本では劇場未公開でした。テーマの普遍性を考えると、実にもったいないことだと思います。

でも、幸い今はDVDやVODで観ることができます。ヘイトの問題に関心がある人もない人も、できるだけ多くの人に観てほしいと願う作品です。

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