レビュー

【チョコレートドーナツ】映画の感想|胸をしめつけられる結末がずっと心を離れなかった


チョコレートドーナツ
総合評価

「チョコレートドーナツ」のあらすじ、感想です。

VODを契約していてよかったと感じることの一つが、映画との再会です。

昔観て感動した作品、観たかったけどあきらめた作品をリストに見つけた時の嬉しさは、特別なものがあります。

本作も偶然タイトルが目に留まり、公開当時とても観たかった映画だったことを思い出しました。

内容は忘れていましたが、口コミ評価の高さは覚えていたので、期待を胸に鑑賞しました。

  1. ルディとポールがマルコへ注ぐ愛情
  2. 語られない部分を想像するストーリー

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チョコレートドーナツ 基本情報

原題 Any Day Now
製作国 アメリカ合衆国
監督 トラヴィス・ファイン
出演者 アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ
公開時期 2014年
ジャンル 人間ドラマ

チョコレートドーナツ あらすじ

1979年。女装パフォーマーとして働くルディは、同性愛者であることを隠し、母親が逮捕され施設に送られることになったダウン症の少年・マルコを引き取る。

ルディとパートナーのポールはマルコに深い愛情を注ぎ、三人は幸せな時間を過ごす。

しかし、同性愛者への偏見と差別に満ちた社会は、彼らが家族として生きることを許さなかった。

チョコレートドーナツ ツイッターの反応

チョコレートドーナツ 個人的な感想 ⚠︎ネタバレ有り

この映画の上映時間は、1時間39分と短めです。

多くを語らず、淡々と進むストーリーの中に、観客が想像する余白が多く含まれていることが、とても印象的な映画でした。

たとえば、ルディがなぜマルコに特別な思いを抱き、引き取ろうとしたのかについては、説明されません。

それでも、ルディがマルコに向ける慈愛に満ちた表情や、寝る前に物語を聞かせる姿を見ているだけで、ルディがマルコを無条件に愛していることは、はっきりとわかります。

この事実から、ルディが歩んできた人生に思いをめぐらせ、これまでも彼が子どもやマイノリティの人々に向けてきたであろう優しさを想像することは、難しくありませんでした。

ルディとポール、マルコの三人は、短いながらも家族として幸せな時間を過ごします。

しかし、社会は彼らが家族として生きることを許しませんでした。

強制的に薬物中毒者の母親の元へと戻されたマルコは、ルディたちの家を探して3日間さまよったあげく、橋の下で孤独に死んでいきます。

本作が徹底しているのは、このマルコの死についてすら、多くを語らないところです。

ルディとポールがマルコの死を知った瞬間の描写はないし、彼らが悲しみ、絶望する様子も描かれません。

「マルコは死んだ」という事実だけを告げ、そのままエンドロールに入ったことには、さすがに驚きました。

でも、思えば最初から最後までこの作品は、起きたことを淡々と提示するだけで、その解釈は観客に委ねるような映画でした。

だからこそ、作品から投げられたボールを受け止めて、私は想像しました。

マルコの死を知ったルディとポールが、どれほど打ちひしがれたのか?そこから、彼らは前を向くことができたのか?

ルディたちとマルコを引き離した裁判官や弁護士は、マルコの死を知って何を思ったのか?

同性愛者への差別、子どもへの虐待、血の繋がりと親子関係、無償の愛…。考えるべきことが次から次へと出てきて、鑑賞後もぐるぐると頭の中をまわりました。

長い話にしようと思えば、いくらでも長くできそうな題材です。

そこをあえて必要最低限の描写におさえることで、製作者が、観客に”考えること”を求めたのならば、その通りになりました。

短かったのは上映時間だけで、鑑賞後にこの作品のことを考える時間も含めれば、とても長い映画だったからです。

本作を観るならば、後ろに予定がないタイミングがいいかもしれません。

劇中で語られなかった部分に、後からじっくりと思いをはせることで、映画が伝えたかったことを、より深く理解できるのではないかと思います。

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2015年。91分と短く、静かな映画ですが、観終えた時の驚きとあふれ出る様々な感情は、思わず誰かに話したくなります。

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