イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 | |
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総合評価 |
第87回アカデミー賞・脚色賞受賞の「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」のあらすじ、感想です。
最近少し「重い」映画の鑑賞が続いたので、気軽に楽しめる作品が観たい…と、以前からウォッチリストに入れていた「イミテーション・ゲーム」に目を付けました。あらすじは詳しく読まず、ストーリー欄で目に付いた「解読不可能な暗号」「天才数学者」といった言葉から、ミステリーにちょっとアクション要素を盛り込んだ、エンタメ系の映画を想像。ところが蓋を開けてみると、イメージとは全く違う映画でした。
- 解読不可能な暗号機「エニグマ」に挑む男たち
- AIの開拓者・アラン・チューリングの知られざる半生
この記事の要点まとめ
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 基本情報
原題 | The Imitation Game |
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原作 | 伝記 「Alan Turing: The Enigma」アンドリュー・ホッジス |
監督 | モルテン・ティルドゥム |
脚本 | グレアム・ムーア |
出演者 | ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グッド |
公開時期 | 2015年 |
ジャンル | ミステリー/人間ドラマ |
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 あらすじ
第2次世界大戦下のイギリス。27歳の数学者アラン・チューリングは、海軍中佐デニストン配下で行われていた、ドイツの暗号機「エニグマ」の解読チームに加わった。変わり者で、同僚と上手くコミュニケーションが取れないチューリングだったが、解読装置を作るのに必要な資金を求めてチャーチル首相に直訴し、チームの責任者となる。チューリングは数名を解雇し、難解なパズルを解く試験に合格した女性ジョーンらを、新たにチームに採用。作業を進めて解読装置は完成するが、ドイツ軍が毎日暗号パターンを変更するため、なかなか解読には成功しない。そんな中、デニストンはチューリングに、一か月の期限を設けた上で、解読が成功しなければ解雇すると言い渡す…。
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 ツイッターの反応
昨日はアラン・チューリングの命日だったのか……
私が彼の名を知ったのはベネディクト・カンバーバッチ主演の「イミテーション・ゲーム」でした。
これを観てベネさんの演技に惚れたし、アラン・チューリングという人物による後世に残る努力を知った pic.twitter.com/OFSaULGQrm— ちびこ@EG鑑賞済み (@9geronimo9) 2019年6月8日
形容し難いんですがあらゆる努力が面倒になった時にイミテーションゲーム見ると、もっともっと自分は頑張れるような気がするんですよね、だから何度でも見返してしまう つらいけど
— LILY (@SHERLOCKED_1234) 2019年6月7日
イミテーションゲーム見ました…泣いた。偉業を成し遂げる偉大な人は、他者と違う部分が多いけれど、なぜ世の中は彼らを幸せにさせてくれないのか。過去の人の頭脳があるから今私達は暮らせてるんだな…と。 pic.twitter.com/Zmz5AJdFCW
— きょじ (@kyozikz333) 2019年5月18日
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 個人的な感想 ⚠︎ネタバレ有り
ナチスドイツの暗号機「エニグマ」解読は、第2次世界大戦の終戦を2年以上早め、1400万人以上の命を救ったとみられる大変な偉業でした。
さらに、暗号解読装置で「機械に思考させること」を試みたという点で、チューリングは人工知能(AI)の開拓者でもありました。
それにも拘わらず、チューリングは戦後も孤独で荒れた生活を送り、自殺でこの世を去っています。なぜ彼は歴史に華々しく名前を残していないのか?その背景と秘密が徐々に明かされる映画の展開に、最後まで目が離せませんでした。
最初は、チューリングという天才が一人で華麗に暗号を解き、周囲を驚かすのかな…といった想像もしましたが、アメリカもソ連も解読できなかったエニグマは、そんなに甘くありません。
解読作業の壁になっていたのは、変わり者でコミュニケーション下手なチューリングと、チームの同僚たちとの不仲でした。
そこで、新しく採用した女性ジョーンが、チューリングと同僚との仲を取り持ちます。他人との接し方を学んだチューリングを同僚は受け入れ、チームはまとまり、暗号解読へと繋がっていきます。
天才と言っても能力を活かすためには、周囲の協力が欠かせない。大きな課題に挑む場合はなおさらです。実話らしく地に足のついた、リアルな展開だと感じました。
試行錯誤の末、ようやく手がかりを得たチューリングたちは、エニグマの暗号解読に成功。ドイツ軍の通信を傍受して、連合軍を勝利へと導きます。
ところが、歴史に残る偉業にも関わらず、戦後のチューリングの生活は、幸せとは言い難いものでした。なぜか?理由は二つありました。一つは、エニグマ解読が戦後も国家機密として公にされなかったこと。もう一つはチューリングが同性愛者であったことです。
当時、同性愛は法律で罰せられていました。チューリングも有罪判決ののち、ホルモン治療(化学的去勢)を強要され、後に自殺しています。
今と時代背景が違うとわかっていても、「歴史的偉業を成し遂げた人に、この扱いは酷い…」とやり場のない気持ちがあふれてきます。
ちなみに2013年、エリザベス女王はチューリングに”死後恩赦”を与え、前例のない偉業を称えたそうですが、あまりに遅いと思います。
それほど遠くない過去。少数派の人達にきわめて不寛容な社会がありました。今後チューリングのように、人間社会の発展そのものに貢献するような人物が現れた時、たとえその人物が少数派だったとしても、才能をつぶさない世の中であってほしい。そう願います。
アラン・チューリングという人物について知れただけでも、この映画を観て本当によかったと感じます。コンピュータ・AIがまさに世界の中心となっている今、多くの人に観てほしい映画です。
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