運び屋 | |
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総合評価 |
「運び屋」のあらすじ、感想です。
劇場公開時、多くのメディアで見かけて気になった作品です。
90歳、現役の麻薬の運び屋。いかにもアメリカ映画らしい設定だなあ…と思ったら、なんと実話でした。
ネタバレに触れないよう、紹介記事やレビューを読むのは避けたため、今回観るまであらすじ以外は知りませんでした。
題材から、派手な銃撃戦やマフィアの暴力シーンなどがたっぷりの、クライム・ムービーを想像していました。
- なぜ、男は”運び屋”になったのか
- 人生の選択と後悔
運び屋 基本情報
原題 | The Mule |
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原案 | ニューヨーク・タイムズ(記事) 「The Sinaloa Cartel’s 90-Year-Old Drug Mule」サム・ドルニック |
監督 | クリント・イーストウッド |
出演者 | クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン |
公開時期 | 2019年 |
ジャンル | クライムサスペンス/人間ドラマ |
運び屋 あらすじ
花の栽培業を営むアール・ストーンは、品評会で数々の賞を獲るなど、園芸家として活躍していた。
その一方で、仕事を優先し家庭を顧みないため、家族との間には亀裂が生じ、特に娘との関係は、修復困難なものになっていた。
時が流れ、花が売れなくなったことで園芸場は破綻。自宅も差し押さえられたアールは、経済的な困窮に陥る。
ある日、孫娘に招待されたパーティーで、アールは一人の男から、荷物を運ぶドライバーの仕事を紹介される。
仕事を引き受けるために、指定された場所へ向かったアールを迎え入れたのは、数人のメキシコ人だった。
荷物の中身を決して見ないことを約束し、トラックに積んだ荷物を指定の場所まで運ぶため、アールは出発する。
しかし実は、荷物の中身は大量のコカインで、依頼主はメキシコの麻薬組織だった。
同じ頃、アメリカ麻薬取締局(DAE)のベイツ捜査官は、麻薬組織と運び屋を一斉摘発するための作戦を進めていた。
運び屋 ツイッターの反応
映画『運び屋』
確かに失うものがない老人は最強だ。
イーストウッドには生きてる限り良作を作り続けてほしい。— オペラ座の隣人 (@operaza_rinjin) November 4, 2019
クリントイーストウッドの運び屋見終わった
面白い映画やったな
実年齢に近い役を演じてたけど、イーストウッドかっこええなぁ
あんなじいさんになりたいわ— ひろひとんとん (@hitotoron) October 29, 2019
運び屋 感想
文句の付け所がない。
いくらお金があっても失われた過去、時間は買えない。
今生きている時間を大切にしよう、と思える。
そして何より、イーストウッド、カッチョえぇ。
2019年ベスト10、入る可能性大。 pic.twitter.com/T9dZviesAj— まりりん 公式アカウント (@mariririri42) March 12, 2019
運び屋 個人的な感想 ⚠︎ネタバレ有り
主人公のアール・ストーンは、仕事一筋で家庭を顧みない男ですが、真面目な性格で、犯罪には無縁の人生を送ってきました。
そのため、どうしてもわからなかったのは、なぜ荷物がコカインだと知った後も、運び屋を続けたのか?という点です。
罪の意識を感じる様子もなく、カーステレオに合わせて歌いながら陽気にハイウェイを走るアールは、一体どんな心境なのか?
心情や背景がまったく語られないことに、モヤモヤした気分が続きました。
アールについて、ようやく自分なりに解釈ができたのは、映画の終盤です。
孫娘から「元妻のメアリーが危篤」という連絡を受けたアールは、運び屋の仕事を途中で放り出し、メアリーの元へと駆けつけます。
当然麻薬組織は激怒し、裏切り者のアールを血眼で追いかけ、殺そうとします。
この行動を見て、一つわかったことがありました。
それは、アールが最初からまったく死を恐れていなかったということです。
仕事をなくし、家族にも拒絶され、失うものがないアールは、逮捕されることも、麻薬組織に消されることも怖くなかった。
アールにとって運び屋を続けることは、自ら破滅の道を進む、ゆるやかな自殺も同然だったのではないか。個人的に、アールが運び屋を続けた理由をそんなふうに解釈しました。
初めて仕事より家族を優先したことで、アールは家族に赦され、受け入れられます。
しかしその直後、麻薬取締局によって逮捕され、家族との関係を取り戻す機会は、永遠に失われました。
疲れ切ったよぼよぼの老人が捜査員に取り押さえられる姿を見ていたら、哀しくて、滑稽で、涙があふれてきました。
もし、最初から家族を大切にしていたら。もし、運び屋などやらなかったら。頭に浮かぶのは、いくつもの人生の”if”。
アールが人生の中で失い続けた時間。その価値の大きさを思うと、涙が流れ続けました。
ちなみに、映画の元になった実在の”運び屋”は、87歳で逮捕され、90歳で亡くなったそうです。
映画に重ねると、刑務所に入ってから死ぬまでの間、アールは穏やかな心で過ごせたのか?あるいは、強い後悔に苛まれ続けたのか?と考えてしまいますが、真実はわかりません。
「運び屋」は、題材から想像するようなクライム・ムービーではなく、ある男の後悔と、取り戻せない時間について描いた人生の物語でした。
後悔しないためには、今をどう生きるべきか?改めて、自分自身の人生を見つめ直したくなる映画です。
運び屋 を観た人にオススメの作品
「ラ・ラ・ランド」
一見、本作とはまったく関係なさそうな映画ですが、「人生における選択」や、「取り戻せない時間」を思いながら観ると、きっと共通点が見つかるはずです。