レビュー

【タクシー運転手 約束は海を越えて】映画の感想|タクシー運転手が見た歴史的事件の真実。実話を元にした物語

タクシー運転手 約束は海を越えて
総合評価

「タクシー運転手 約束は海を越えて」のあらすじ、感想です。

映画館でフライヤーをもらって「面白そう」と思ったのに見逃し、そのまま忘れていた映画の一つです。Amazonのセールでタイトルを見つけて思い出したので、すぐにレンタルしました。

映画の題材となった”光州事件”について観る前に調べたにもかかわらず、心温まるほのぼの系映画を想像していた自分は、のんきで甘かった…と、反省しています。

  1. 韓国現代史に残る悲劇「光州事件」とは
  2. タクシー運転手と外国人記者が果たした役割
  3. 見ごたえのあるアクションシーン

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タクシー運転手 約束は海を越えて 基本情報

原題 タクシー運転手(韓国語)
監督 チャン・フン
出演者 ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン
公開時期 2018年
ジャンル 人間ドラマ

タクシー運転手 約束は海を越えて あらすじ

ソウルで個人タクシーの運転手をするキム・マンソプは、妻に先立たれ11歳の娘と二人暮らし。生活は苦しく、滞納した家賃の支払いを大家に迫られていた。

ある日マンソプは、10万ウォンという高額な料金で、南西部の街・光州までタクシーで行きたいと言う外国人がいる、という情報を聞く。

他の運転手をうまく出し抜き、ドイツ人記者・ピーターを乗せたマンソプは、10万ウォン目当てに光州へと車を走らせる。

そのころ、光州では民主化を求める市民デモが続き、軍事政権によって、光州と他の都市を結ぶ道路は封鎖、電話などの通信も遮断されていた。

マンソプのタクシーも途中検問で止められるが、何とか切り抜けて光州市街に入る。

そこで、マンソプたちが見たものは、デモ隊を押さえつけるために市民に発砲し、暴虐の限りをつくす軍の姿だった。

ピーターは、光州で起きていることを世界に発信するため、命がけでカメラを回しはじめるが…。

タクシー運転手 約束は海を越えて ツイッターの反応

タクシー運転手 約束は海を越えて 個人的な感想 ⚠︎ネタバレ有り

映画のポスターに写る、タクシー運転手の満面の笑顔。

このポスターからハートウォーミングな映画を想像する人は多いでしょう。私もそうでした。

しかし本作は、この屈託のない表情からは想像もつかないような悲劇、”光州事件”を描いた映画です。

光州事件とは、1980年、韓国・光州市で起きた軍による市民の大量虐殺事件です。

民主化を求める市民のデモ隊を凄惨な暴力で押さえつける軍。死体と怪我人があふれ返る光州の街は、まさに地獄でした。

隣国で、しかも近い過去に起きたとは信じられないような事件ですが、個人的に一番恐ろしいと感じたのは、これほどの大事件が、当初全く報道されていなかったという点です。

軍事政権によって報道はすべて規制され、首都ソウルの市民ですら、光州で何が起きているのかを知らずにいました。

ソウルのタクシー運転手・マンソプも現状を知らないまま、ドイツ人記者・ピーターを乗せて、光州へと向かいます。

命がけで騒乱の中心へと潜入し、カメラを回し始めるピーター。光州で起きていることを、世界に知らせるための行動でした。

戦場カメラマンや、紛争地帯を取材する記者は、そのリスクの大きさから時に批判されますが、本作を見ると、彼らの仕事が、いかに重要かがわかります。

特に、国内の報道が規制された場合、外国人記者や海外の報道機関は、まさに命綱。報道が持つ力と果たすべき役割について、改めて考えさせられました。

一方、本作は歴史的事件を題材にした実話でありながら、決して難しく、わかりにくい映画ではありません。

主人公・マンソプの穏やかな日常を見ているうちに、いつの間にか歴史的事件の中心へといざなわれる展開は、とても自然です。

さらに、デモ弾圧の場面も、ただ悲惨な描写を見せられるのではなく、アクションやスリルあふれるシーンで、エンタメ的に楽しめる工夫がされています。

多くの犠牲者が出た事件を「楽しんで観る」などと言うと、不謹慎なようにも聞こえますが、そもそも映画として面白くなければ大勢の人に観てもらえないし、歴史を伝える手段としても成立しません。

そのような意味で、本作は、優れたエンターティメント作品でありながら、重大な歴史的事件について学ぶこともできる、とても貴重な映画でした。

映画を観終えた後は、ぜひ、光州事件について検索してみることをおすすめします。

検索結果の中でも特に、マンソプのモデルとなった、実在のタクシー運転手キム・サボクにまつわる逸話や写真は実に興味深く、本作が残した余韻がさらに深まるはずです。

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